• HOME
  • コラム:外国人ITエンジニアの日本語研修|つまずく場面と、外国籍IT人材向けコースの組み方

外国人ITエンジニアの日本語研修|つまずく場面と、外国籍IT人材向けコースの組み方

外国籍のITエンジニアを受け入れている現場で、よく聞く声があります。「技術力は高いのに、日本語のやり取りで止まる」。

ただ、詰まっている原因は技術用語ではありません。技術用語の多くは英語由来で、そのまま通じます。詰まるのは、仕様の認識を合わせる場面と、「できない」「間に合わない」を伝える場面です。この2つは、日本語能力試験の勉強では出てこない領域です。

この記事では、外国籍ITエンジニアが日本語で詰まる場面を具体的に挙げたうえで、研修をどう組むか、受け入れ側に何ができるかを整理します。

日本語で詰まる5つの場面

現場で問題になりやすいのは、次の5つの場面です。

[表]外国籍ITエンジニアが日本語で詰まる場面
場面 何が起きるか 必要になる日本語
朝会での進捗報告 「順調です」で終わり、リスクが共有されない 現状と見込みを分けて話す型
タスクの受け取り 分かったつもりで持ち帰り、認識がずれる 確認と復唱の言い回し
バグ報告・レビュー 事実と推測が混ざる。指摘が強く聞こえる 事実と考察を分ける表現、クッション言葉
仕様の認識合わせ 用語は通じるのに、前提が食い違う 度合い・条件・例外を確認する質問
トラブル・遅延の報告 報告が遅れる。手遅れになってから出てくる 悪い知らせを早く出す型

このうち、影響が大きいのは4番目と5番目です。認識のずれは手戻りになり、報告の遅れは納期に直結します。

技術は通じるのに、認識がずれる理由

仕様のすり合わせでずれが起きるのは、語彙の問題ではありません。日本語のやり取りが、度合いや条件をあいまいなまま進める前提で成り立っているからです。

  • 「なるべく早く」が、いつまでなのか分からない
  • 「基本的にはこの仕様で」の「基本的に」が、どこまでの例外を含むのか分からない
  • 「一旦これで進めてください」が、確定なのか仮なのか分からない

日本語を母語とする同士なら、文脈と経験で補われます。ところが非母語話者にとっては、この補完が働きません。しかも本人は「分かった」つもりでいるため、実装が上がってくるまでずれに気づけません。

必要なのは語彙ではなく、あいまいな指示を具体に落とす質問の型です。「期限は◯日の◯時でよろしいでしょうか」「例外として想定しているケースはありますか」と聞き返せるようになると、手戻りは大きく減ります。

「できません」を言えないことが最大のリスク

もう1つ、現場で深刻なのがこれです。

進捗が遅れそうなとき、実現が難しいと分かったとき、外国籍のエンジニアが報告をためらうケースは多く見られます。理由は複合的です。

  • 日本語で理由を説明する負担が大きい
  • 評価への影響を気にする
  • 「できない」と言うことが、日本の職場でどう受け取られるか分からない
  • そもそも、どのタイミングで言えばいいのか教わっていない

日本語力に自信がないほど、この傾向は強くなります。説明が難しいから黙る、黙るから状況が悪化する、悪化するとさらに説明が難しくなる、という順で進みます。

対処は2つです。本人側は「結論・経緯・対応」の順で短く伝える型を覚えること。受け入れ側は、報告のタイミングを数字で決めておくことです。「着手から3日進まなければ相談」のように時点を明示すると、判断に迷う余地がなくなります。

研修をどう組むか

外国籍ITエンジニア向けの日本語研修は、汎用のビジネス日本語をひととおり学ぶより、現場で詰まっている場面から逆算するほうが早く効きます。

優先順位はこの順です。

  1. タスクの受け取りと確認:認識のずれを入り口で防ぐ。手戻りの削減に直結します
  2. 進捗報告と、悪い知らせの伝え方:納期リスクの早期発見につながります
  3. バグ報告とレビューでのやり取り:事実と推測を分けて書く、指摘を角が立たない形にする
  4. 会議での発言:意見を言う、反対意見を伝える
  5. 敬語と社外対応:顧客折衝がある場合に追加します

5番目を最初に持ってくる研修設計をよく見かけますが、社内開発が中心のエンジニアにとって優先度は高くありません。敬語の完成度より、まず認識のずれをなくすほうが業務への効果が大きい場面が多いです。

日本語のレベル別では、目安としてこう考えます。

  • N3前後:まず定型のやり取り(朝会での報告、タスクの復唱、チャットでの連絡)を型として覚える
  • N2前後:あいまいな指示を具体化する質問、悪い知らせの伝え方、会議での発言
  • N1前後:チーム運営、合意形成、ステークホルダーとの調整

期間と時間の目安

到達目標によりますが、場面を絞る場合と、レベルを一段上げる場合で変わります。

  • 特定の場面に絞る(朝会の報告とタスク確認など):2か月から3か月
  • レベルを一段上げる:半年から1年

助成金を使う場合は、訓練時間が合計10時間以上あることが要件になります。1回25分のレッスンなら24回以上です。回数と1回の長さから逆算して確認してください。

受け入れ側(PM・リーダー)ができること

研修だけでは埋まりません。現場側でできることが4つあります。

  • あいまいな指示を数字にする。「なるべく早く」ではなく「◯日◯時まで」。「基本的に」を使ったら、例外を口頭で1つ挙げる
  • 復唱を仕組みにする。タスクを渡したら「自分の言葉で説明してもらう」を毎回入れる。認識のずれはここでほぼ捕まえられます
  • 悪い報告を歓迎する。早く報告してくれたこと自体に「助かりました」と返す。ここが崩れると、次から報告が遅れます
  • 報告のタイミングを時点で決める。「困ったら言って」ではなく「着手から3日進まなければ相談」

この4つは、日本語研修より先に、明日からできることです。

Zipanの外国籍IT人材向けコース

Zipanは外国籍社員向けのビジネス特化型オンライン日本語レッスンです。そのなかで、ITエンジニアを主な対象としたキャリアアップコースを用意しています。

  • 構成:1回25分、全45回の2か月集中プログラム。専用レッスン30回、面接対策10回、受講生の要望に応じたAssist Lesson 5回という内訳です
  • 修了要件:専用レッスン30回、かつレッスン40回以上の受講完了
  • コース:職種と目標に合わせて5つの専門コースから選べます。代表的なものは、ITマネジメントスキルアップコース(およそN2以上/プロジェクトマネージャーやリーダー向け)、ITコミュニケーションスキルアップコース(およそN2以上/チーム内のやり取りを伸ばしたい方向け)、上級ビジネス日本語コース(およそN2以上/日本での就労観を身につけたい方向け)です
  • 料金:99,000円(税込)の買い切り型

カリキュラムは、この記事で挙げた詰まりやすい場面をそのまま扱います。ITコミュニケーションスキルアップコースであれば、朝会(デイリースクラム)での進捗報告、タスクの受け取り方、チーム内チャットでのやり取り、バグ報告と対応、ペアプログラミングでの会話、ミスやトラブルの報告といったテーマが並びます。

ITマネジメントスキルアップコースでは、報告の本質、合意形成と根回し、意見の伝え方、本音と建前といった、日本の職場文化そのものを扱う内容が含まれます。

Zipanの通常コースと違い、このコースは教材が自由選択ではありません。職種と課題に合わせてカリキュラムが決まっている点が、月額コースとの違いです。

学習の進め方はラーニングサイクル、予習・復習用の動画教材Video Lessonsはプログラムページでご紹介しています。

複数名をまとめて受講させたい場合や、自社の開発体制に合わせた設計をご希望の場合は、法人のお問い合わせからご相談ください。マンツーマン(1回25分)に加えて、グループ研修にも対応しています。導入企業の取り組みは導入事例で公開しています。

まとめ|技術用語ではなく、認識合わせと「できない」の伝え方

外国籍ITエンジニアが日本語で詰まるのは、技術用語ではありません。仕様の認識を合わせる場面と、「できない」「間に合わない」を伝える場面です。

研修は、汎用のビジネス日本語を最初から学ぶより、現場で詰まっている場面から逆算するほうが早く効きます。タスクの受け取りと確認、進捗報告と悪い知らせの伝え方、バグ報告とレビュー。この順で組むのが実務的です。

そして受け入れ側は、あいまいな指示を数字にする、復唱を仕組みにする、悪い報告を歓迎する、報告のタイミングを時点で決める。この4つを研修と並行して進めてください。研修だけでは埋まらない部分です。

よくある質問(FAQ)

Q. 技術用語は英語で通じるので、日本語研修は不要ではないですか。
A. 技術用語そのものは通じることが多いです。問題になるのは、その周りにある「なるべく早く」「基本的には」「一旦これで」といった度合いや条件のあいまいな表現です。ここが伝わらないと、用語が通じていても認識がずれます。研修で扱うべきなのは技術語彙ではなく、この確認のやり取りです。
Q. 日本語レベルがどのくらいあれば、研修の効果が出ますか。
A. 定型のやり取りを型として覚える段階であればN3前後から始められます。あいまいな指示を具体化する質問や、悪い知らせの伝え方といった運用力の部分は、N2前後から取り組むと定着が早くなります。ただし級はあくまで目安で、実際の到達段階は業務の場面に当てはめて確認してください。
Q. 開発が忙しく、研修の時間を確保できません。
A. 1回25分のオンラインレッスンであれば、始業前や昼休みにも組み込めます。Zipanは早朝5時から深夜1時まで受講でき、予約は15分前まで可能です。まとまった時間を確保するより、短時間を高頻度で積み上げるほうが、話す力は伸びやすくなります。